2022/03/15
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬・ワクチンの開発動向をまとめました。
(写真=米国立アレルギー・感染症研究所)
治療薬
開発中のCOVID-19治療薬は、以下な薬剤に分類できます。
・ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬。
・重症化によって生じる「サイトカインストーム」や「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」を改善する薬剤。
いずれも開発のアプローチとしては、既存薬を転用する方法で進められています。
*COVID-19向けに新たな薬剤を開発する動きもあります。
厚生労働省は5月12日の通知ではCovid-19に対する治療薬の早急な実用化を進めている。
治験結果を待たずに承認申請を可能とする。
・公的な研究事業で一定の有効性、安全性が確認があれば治験結果を待たずに申請が可能。
*対象:医薬品・医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品
・「新型コロナウイルス感染症に対する医薬品等は、最優先で審査を行う」
抗ウイルス薬
現在、COVID-19に対する抗ウイルス薬の候補として国内外で臨床試験・臨床研究が行われているのは、
▽レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)
▽ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)
▽ロピナビル/リトナビル(米アッヴィの「カレトラ」)
▽ヒドロキシクロロキン(仏サノフィの「プラケニル」)
▽シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)――等。
急性膵炎治療薬ナファモスタット(日医工の「フサン」)や同カモスタット(小野薬品工業の「フオイパン」)なども候補に挙がっています。

「イベルメクチン」はオミクロンにも効果あり
興和株式会社と北里大の共同研究の結果より、新型コロナウイルス感染症の治療薬として臨床試験(治験)中の抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、オミクロン株にも、アルファやベータ、ガンマ株と同等の抗ウイルス効果があることを確認した。
イベルメクチンは寄生虫感染症治療薬として20年以上の実績があり、現在もっと期待されているコロナ治療薬です。
期待というの、イベルメクチンは世界中に既に製造できるメーカーがたくさんある事という意味合いで、もっとも安価に製造、流通が可能なコロナ、オミクロン株への予防及び治療薬として期待されている。
*残念ですが、イベルメクチンは正規品のジェネリックが多数発売されているので、医療関係者、利権関係からの広告費用が得られないため、あまり話題となっていない。
*イベルメクチンは15年にノーベル生理学医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授らが発見した抗生物質。
厚生労働省は5月7日、
レムデシビル(製品名・ベクルリー)を新型コロナウイルス感染症に対する国内初の治療薬として承認しました。
米国ではFDA(食品医薬品局)が5月1日に緊急的な使用を許可しており、日本でもこれを受けて特例承認を適用。
同月4日の承認申請から3日でのスピード承認となりました。
ベクルリーは重症患者が対象で、症状に応じて10日間または5日間投与します。厚労省は、レムデシビルの日本への供給量が限定的なものとなる可能性があると見ており、重症患者の受け入れ状況に応じて国が医療機関への配分を管理しています。
レムデシビル(米ギリアド)

レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。
コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに抗ウイルス活性を示すことが明らかになっており、COVID-19の治療薬として最も有望視されている薬剤の1つです。
米FDA(食品医薬品局)は5月1日、レムデシビルについて、COVID-19の重症入院患者を対象に緊急時使用許可を与えました。許可の根拠となったのは、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)主導で中等症から重症の患者を対象に行われた臨床第3相(P3)試験と、ギリアドが行っている重症患者対象のP3試験。NIAID主導の試験では、回復までの期間をプラセボに比べて31%早めることが示され(レムデシビル群11日、プラセボ群15日)、死亡率も有意差はつかなかったものの改善傾向が示されました(レムデシビル群8.0%、プラセボ群11.6%)。
日本では、FDAによる使用許可を受けて特例承認を適用する方針が示され、ギリアドが5月4日に承認申請。同7日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が特例承認を了承し、厚労省は即日承認しました。

NIAID主導のP3試験とギリアドによるP3試験は、いずれもまだ進行中。ギリアドはP3試験を2本行っており、重症患者を対象とした1本目のP3試験の初期データでは、5日間投与でも10日間投与と同等の効果が得られる可能性が示されました。中等症患者を対象とした2本目のP3試験は5月下旬に初期のデータが公表される見込みです。
レムデシビルとアビガンの比較
レムデシビルとアビガンは、もともとの適用疾患は異なるものの、作用機序は似ています。ですが、レムデシビルは5月7日に薬事承認が下り、日本で初めての新型コロナウイルス治療薬として5月中旬から医療機関での使用が開始されます。一方、アビガンは現在も審査中です。この二つのお薬にはどのような違いがあるのでしょうか。二つの薬の特徴的な違いを見ていきましょう。
最も違うところは同じ新型コロナウイルスへの効果が期待されていますが、想定している対象患者さんの重症度が違うというところです。アビガンは口から飲む内服薬であるため、口から薬を飲むことが可能な程度の重症度であることが必要です。レムデシビルは点滴で投与する薬ですので患者さんの状態は問いません。また現在での備蓄量や、これまでそれぞれの薬が使用された患者さんの数や集まった知見などから、アビガンは軽症から中等症の新型コロナウイルス患者が重症化せず、早く改善するようにする効果を期待されています。一方、レムデシビルは人工呼吸器を必要とするなどの重症患者の死亡率を改善する効果が期待されています。そしてそれらを検討するような臨床試験が現在それぞれの薬で行われています。
またもう一つ考えられるのが、既知の副作用です。どちらもまだ研究を含めた人での使用例は決して多くはなく今後の知見の蓄積が待たれますが、アビガンには動物実験で認められた催奇形性があります。このため例年のインフルエンザでは使用されず、新型インフルエンザのような緊急事態のために備蓄されています。今回想定される対象には、軽症の若い妊娠の可能性がある年齢層も含まれるでしょうから、このことは非常に注意が必要です。レムデシビルは、まだ副作用に関する知見も少ないことから、そのリスクを許容しながらでも使用しなくてはならないような命の危機にある重症な方が想定される対象になっている面があります。
ファビピラビル(富士フイルム富山化学:アビガン)

ファビピラビルは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が備蓄しています。
ファビピラビルは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。
日本では、富士フイルム富山化学が3月にCOVID-19を対象にP3試験を開始。臨床試験登録サイトに掲載されている情報によると、対象は重篤でない肺炎を発症したCOVID-19患者約100人で、肺炎の標準治療にファビピラビルを追加した場合の効果を検証しています。米国でも4月からP2試験が進行中です。
シクレソニド(帝人ファーマ)

シクレソニド(オルベスコ)は、日本では2007年に気管支喘息治療薬として承認された吸入ステロイド薬。国立感染症研究所による実験で強いウイルス活性を持つことが示され、実際に患者に投与したところ肺炎が改善した症例も報告されています。
国内では、無症候または軽症のCOVID-19患者を対象に、対症療法と肺炎の発症または増悪の割合を比較する多施設共同の臨床試験が国立国際医療研究センターを中心に行われています。
国内でも手軽に入手が出来る吸入タイプのステロイド薬は様々あります.
ぜん息持ちのかたらアストラゼネカの「シムビコート」もご存知ではないでしょうか。

ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィ)
ロピナビルはウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬で、リトナビルはその血中濃度を保ち、効果を増強する役割を果たします。これらの配合剤であるカレトラは、日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。
In vitroや動物モデルを使った研究でMERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示唆されました。CrinicalTrials.govによると、中国を中心にCOVID-19患者を対象とした臨床試験が複数行われていますが、中国の研究グループは3月18日付のNEJMに、カレトラを投与しない群と比べて臨床的な改善までの時間に差はなかったとの結果を発表しました。
その他
抗マラリア薬クロロキンや皮膚エリテマトーデス/全身性エリテマトーデス治療薬ヒドロキシクロロキンも欧米を中心に多くの臨床試験が行われており、国内でも群馬大でロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキンの3剤併用療法の臨床研究が進行中。ただし、海外ではヒドロキシクロロキンを投与されたCOVID-19患者で心臓の副作用が相次いで報告されており、日本でもサノフィが注意を呼びかけています。
タンパク分解酵素阻害薬ナファモスタットや同カモスタットは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の細胞内への侵入を阻止する可能性があるとされ、日本では東京大付属病院などでファビピラビルとナファモスタットの併用療法を検討する臨床研究がスタート。一方、カモスタットを製造販売する小野薬品は「臨床試験の開始について検討するとともに、国内外の医療機関・研究機関からの要請に基づき臨床研究用製剤を供給すべく準備中」としています。
重症患者に対する治療薬

COVID-19が重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応に重篤な臓器障害を起こしたり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重度の呼吸不全を起こしたりすることが知られています。
こうした重症患者に対する治療薬としては、サイトカインの一種であるIL-6(インターロイキン-6)の働きを抑える抗体医薬や、サイトカインによる刺激を伝えるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤が候補に挙げられています。

スイス・ロシュは4月から、中外製薬が創製した抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(製品名「アクテムラ」)のP3試験を米国、カナダ、欧州などで開始。国内でも中外がP3試験を始めており、年内の承認申請を目指しています。米リジェネロン・ファーマシューティカルズと仏サノフィも、共同開発した抗IL-6受容体抗体サリルマブ(同「ケブザラ」)のP2/3試験を欧米で実施中。日本でも近く試験が始まる見通しです。両剤はいずれも、日本で主に関節リウマチの治療薬として使われています。
JAK阻害薬では、関節リウマチ治療薬バリシチニブ(米イーライリリーの「オルミエント」)が米NIAID主導のアダプティブデザイン試験の一部として臨床試験を開始。試験は今後、欧州やアジアなどの施設にも拡大される予定で、6月ごろに結果が得られる見通しです。トファシチニブ(米ファイザーの「ゼルヤンツ」)も欧州で医師主導臨床試験が行われているほか、スイス・ノバルティスも骨髄線維症などの適応で承認されているルキソリチニブ(製品名「ジャカビ」)のP3試験を準備していることを明らかにしています。
エーザイは、かつて重症敗血症を対象に開発していたものの、P3試験で主要評価項目を達成できずに開発を中止したTLR4拮抗薬エリトランの国際共同治験を6月に開始する予定。サイトカイン産生の最上流に位置するTLR4(Toll様受容体4)の活性化を阻害することで、サイトカインストームの抑制を狙います。
米メディシノバは、多発性硬化症などで開発中のイブジラスト(日本では杏林製薬が脳血管障害・気管支喘息改善薬「ケタス」として販売)について、米イェール大と共同でCOVID-19によるARDSを対象とした臨床試験を始めました。米アサシスとヘリオスは体性幹細胞によるCOVID-19由来ARDS治療の臨床試験を日米で行っています。
イーライリリーは、がんなどを対象に開発中の抗アンジオポエチン2(Ang2)抗体LY3127804について、ARDSを発症するリスクの高いCOVID-19入院患者を対象とするP2試験を開始。Ang2はARDSを呈する患者で増加することがわかっており、試験ではAng2を阻害することでARDSの発症や人工呼吸器の使用を減らせるかどうかを検証しています。
英アストラゼネカは海外で白血病治療薬として承認されているBTK(ブルトン型キナーゼ)阻害薬アカラブルチニブの臨床試験を実施中。このほかにも、糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬ダパグリフロジン(製品名「フォシーガ」)について、米セントルーク・ミッドアメリカ・ハートインスティチュートと臓器不全などの重度の合併症を発症する危険性のある患者を対象としたP3試験を行っています。
新規薬剤の開発
既存薬を転用するアプローチで治療薬の開発が進む一方で、新規の薬剤を開発しようとする動きも広がっています。

武田薬品工業は4月6日、原因ウイルスSARS-CoV-2に対する高度免疫グロブリン製剤の開発で、米CSLベーリングなど5社と提携すると発表。5月8日には新たに4社が加わり10社による協力体制を構築しました。10社は原料となる血症の採取から臨床試験の企画・実施、製造まで幅広く協力し、ノーブランドの抗SARS-CoV-2高度免疫グロブリン製剤を共同で開発・供給する考え。今夏にも、NIAIDと協力して成人患者を対象としたグローバル試験を始める予定です。
イーライリリーはSARS-CoV-2に対する抗体医薬の開発で、中国・上海のジュンシー・バイオサイエンシズと提携。ジュンシーはすでに複数の中和抗体を設計しており、6月までに臨床試験の開始が見込まれているものもあるといいます。
リジェネロンはSARS-CoV-2に対する多数の抗体を特定し、このうち2つを混合したカクテル抗体の臨床試験を初夏までに始める方針。米ビル・バイオテクノロジーは2つの抗ウイルス抗体(VIR-7831とVIR-7832)の開発で英グラクソ・スミスクライン(GSK)と提携し、今夏にP2試験を始める予定です。ビルは米アルナイラム・ファーマシューティカルズと共同でSARS-CoV-2を標的とするsiRNA核酸医薬も開発しています。
ファイザーはSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示すプロテアーゼ阻害薬候補を特定しており、今年7~9月期にも臨床試験を始める予定です。塩野義製薬も北海道大との共同研究でCOVID-19に対する抗ウイルス薬の候補を特定。今年度中の臨床試験開始を目指して研究を進めています。
ワクチン
感染を予防するワクチンの開発も進んでいます。

中でも活発なのが、新型コロナウイルスに対する中和抗体の開発です。現在、アストラゼネカやイーライリリー、リジェネロン、グラクソ・スミスクラインなどが臨床試験を進めています。
米国のビル・バイオテクノロジーと提携するグラクソ・スミスクラインは、8月下旬から抗ウイルス抗体「VIR-7831/GSK4182136」のP2/3試験を開始。年内に結果が出る可能性があり、早ければ来年前半にも使用できるようになるとしています。両社は別の中和抗体「VIR-7832」の開発も進めており、年内にP2試験を始める予定です。
アストラゼネカも8月下旬から、COVID-19患者に由来する2つの抗体を組み合わせたカクテル抗体「AZD7442」のP1試験を英国で実施中。イーライリリーは6月から、カナダのアブセラと共同開発している抗体医薬「LY-CoV555」のP3試験を米国で行っています。リリーは中国・上海のジュンシー・バイオサイエンシズとも抗体医薬の開発で提携しており、6月からP1試験を行っています(開発コードは「JS016」)。リジェネロンも、2つの中和抗体を混合したカクテル抗体「REGI-COV2」の臨床試験を実施中で、8月には同抗体の開発・販売でロシュと提携しました。
武田薬品工業は、米CSLベーリングなど血漿分画製剤を手掛ける海外の製薬企業9社と提携し、原因ウイルスSARS-CoV-2に対する高度免疫グロブリン製剤の開発を進めています。10社は、原料となる血漿の採取から臨床試験の企画・実施、製造まで幅広く協力し、ノーブランドの抗SARS-CoV-2高度免疫グロブリン製剤を共同で開発・供給する計画。今夏にも、NIAIDと協力して成人患者を対象としたグローバル試験を始める予定です。
低分子の抗ウイルス薬の開発も進められています。
米メルクは米リッジバック・バイオセラピューティクスと提携し、抗ウイルス薬「MK-4482」のP2試験を実施中。ファイザーはSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示すプロテアーゼ阻害薬候補を特定しており、今夏にも臨床試験を始める予定です。塩野義製薬も北海道大との共同研究でCOVID-19に対する抗ウイルス薬の候補を特定。今年度中の臨床試験開始を目指して研究を進めています。
オンコリスバイオファーマは鹿児島大と契約を結び、同大が見出した抗ウイルス薬の開発に着手。カネカは国立感染症研究所と共同で治療用抗体を開発しており、製薬会社と組んで21年度中に臨床試験を始めたいとしています。
ビルは米アルナイラム・ファーマシューティカルズと共同でSARS-CoV-2を標的とするsiRNA核酸医薬も開発しており、開発候補として吸入型のsiRNA「VIR-2703(ALN-COV)」を特定。今年の末をメドに臨床試験を始める見込みです。今年5月、国産初の核酸医薬となるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(ビルトラルセン)を発売した日本新薬も、新型コロナウイルスに対する核酸医薬の開発を検討。バイオベンチャーのボナックもCOVID-19向け核酸医薬の研究を進めています。
アンジェス、田辺三菱、塩野義が開発
日本企業では、アンジェスと大阪大がDNAワクチンを共同で開発中。タカラバイオが製造面で協力し、化学大手のダイセルが有効性を高めるための新規投与デバイス技術を提供。現在は非臨床試験を実施中です。
田辺三菱製薬もワクチン開発に乗り出しています。3月、カナダの子会社メディカゴがSARS-CoV-2の植物由来ウイルス様粒子(VLP)の作製に成功したと発表。これを使ったCOVID-19向けワクチンの非臨床試験を行っており、「順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するために当局と協議したい」(田辺三菱)としています。塩野義製薬は、グループ会社のUMNファーマが日本医療研究開発機構(AMED)の事業に参画して組み換えタンパク抗原の作製を進めており、年内の臨床試験開始に向けて厚生労働省などと協議を進めています。
アイロムグルームのIDファーマは、国立感染症研究所と連携し、センダイウイルスベクターを使ったワクチンを研究しています。
ワクチン開発状況

感染を予防するワクチンの開発も進んでいます。
WHOの9月3日時点の情報を参考にすると、
現在、臨床試験に入っているCOVID-19ワクチン候補は34種類。このほかに142種類が前臨床の段階にあります。
ロシア保健省は8月11日、国立ガマレヤ研究所(モスクワ)が開発したCOVID-19に対するウイルスベクターワクチン「スプートニクV」を承認したと発表。COVID-19ワクチンの承認は世界初ですが、同ワクチンはまだ臨床試験を実施している段階で、安全性や有効性には疑問の声も上がっています。

アストラゼネカやモデルナなど先行
先行で開発しているのは、
アデノウイルスベクターワクチン「ChAdOx1-S/AZD1222」(英オックスフォード大、英アストラゼネカ)など。
これは、英国でP3試験が行われており、米国では米IQVIAと開発提携。バーチャルトライアルを活用し開発を進めています。
mRNAワクチン「mRNA-1237」(米モデルナ)も7月27日にP3試験を開始。
mRNAワクチン「BNT162b2」(独ビオンテック、米ファイザー)も、同日からP2/3試験を始めました。
不活化ワクチン(中国シノバック、シノファーム)もP3試験を開始。
DNAワクチン「INO-4800」(米イノビオ)P2/3試験をすぐに開始予定です。
ワクチン開発には欧米の大手製薬企業も参入しています。
ウイルスベクターワクチン「Ad26.COV2.S」(米ジョンソン・エンド・ジョンソン)のP1/2a試験を7月30日に米国とベルギーで開始し、9月には日本でもP1試験が始まりました。
米メルクはオーストリア・テミスの買収で獲得した麻疹ウイルスベクターワクチンの臨床試験を8月に開始。
IAVI(国際エイズワクチン推進構想)とも別のワクチンを開発しており、年内の臨床試験開始を目指しています。
9月3日から、共同開発中の組換えタンパクワクチン(サノフィとグラクソ・スミスクライン)のP1/2試験を開始。年内にP3試験に入ることを目指しています。
サノフィは米トランスレート・バイオともmRNAワクチンの開発で提携しており、GSKも抗ウイルス抗の開発で提携するビル・バイオテクノロジーとワクチン開発でも協力しています。
国内ではアンジェスが治験開始
国内では、大阪大とアンジェスが共同開発するDNAワクチン「AG0301-COVID19」が、6月30日からP1/2試験を行っています。対象は20~65歳の健康成人で、目標症例数は30例(低用量群15例、高用量群15例)。アジュバントを含む同ワクチンを2週間間隔で2回、筋肉内注射し、安全性と免疫原性を評価します。8月21日からは、最適な接種間隔と接種回数を検討するもう1本のP1/2試験を開始。トップラインデータは今年第4四半期に公表される予定です。
塩野義製薬は、グループ会社のUMNファーマで組換えタンパクワクチンの開発を進めており、年内の臨床試験開始に向けて厚生労働省などと協議を進めています。KMバイオロジクスも不活化ワクチンの開発に着手しており、最短で11月に臨床試験を開始する意向。第一三共は、mRNAワクチンについて来年3月の臨床試験開始を目指しており、アイロムグープのIDファーマもセンダイウイルスベクターを使ったワクチンの臨床試験を来年3~5月に始める見込みです。
田辺三菱製薬はカナダ子会社メディカゴで植物由来ウイルス様粒子を使ったワクチンを開発中。グラクソ・スミスクラインと提携し、7月13日にカナダでP1試験を始めました。